六畳間の窓枠

色々な作品の感想や所感を書いていけたらなと

胡乱な物語は身に染みる。という話──獄門撫子此処ニ在リ 感想

伝奇...怪奇で幻想的な物語という枠で括られる作品、或いはその枠に位置するであろう作品には、やはり心を奪われる。

現実と接しながらも届く事は無い絶妙な距離に位置する作品は、科学やネットが進歩し、限りなく超常現象が解体されつつある現代だからこそ"妙薬"とさえ感じる程の輝きと魅力を持っているのだろうなと、この「獄門撫子此処ニ在リ」という作品を読んで、改めて実感するのだった。

 

今回は「獄門撫子此処ニ在リ」の感想となります。

第17回小学館ライトノベル大賞の大賞作品─応募総数1469作って凄くない?─の大賞受賞作品というのにも目を惹かれますが、それ以上に興味を惹かれたのは今回ゲスト審査員を務めていたTYPE-MOON代表「武内崇」氏の影響が大きかったなと。

というのも、自分がTYPE-MOON作品(特に空の境界)を愛好しているからな訳ですが....、それは兎に角、この作品に興味を持つには十分かつ大きな要素だったと思います。──しかし読んでみれば、そういう要素が無くても発売したら必ず買っていたと確信があります。

なぜなら、こういうタイプの作品はド直球で好きなタイプなので!

 

無耶師と呼ばれる霊能力者、そしてその中でも随一で凶悪な「獄門家」の娘である「獄門撫子」と全てが胡乱で出来ている様な妖しさを持つ大学生「無花果アマナ」のコンビは、今年読んだ作品の中でも随一で好きでした。

鬼の一族。その中でも鬼の血が濃く、言って仕舞えばほぼ人外と言って差し支えなかった撫子が、「無花果アマナ」という人物を通してどんどん人間らしくそして歳相応な面を見せるようになっていき、反対に恐れを知らず、爛漫に行動するアマナは「獄門撫子」という少女を通して己の恐れと向き合う事になっていく展開はとても丁寧かつキャラのも魅力を引き出せていて凄く良かったです。

こういう相容れない、もしくは真逆の立ち位置にいた二人が心を開いていく話はやはり魅力があるし好きなんですよね.....王道には勝てねぇぜ.....

そこに並行して作品世界の用語の開示や登場人物達が増えていく(みんな魅力的!)ので集中して読み続ける事が出来ました。

主役コンビ以外なら冠さんや四月一日白羽と真神雪路も好きですが、強いて言えば獄門桐比等ですね。

冷たさを感じる言動を撫子に何度も浴びせますが、時折見せる優しさ?の様な言葉や、グジを料理する下りのお茶目さが凄く印象に残ってます。左側に居る兄弟?達もなんか可愛さがあって好きですね。本体的には恐ろしいモノなのでしょうけど。

 

後、獄門華珠沙も好きですね。あの凶悪さと軽さを持った言動が特に。

 

物語で現れる怪異や現象は恐らく現実にある要素で構成されてると思いますが、浅学なのもあり「ここ分かるぞ!」「ここは...どうだろ!分からね〜!」ってウンウン思いながら退治の内容を噛み砕いていた時間は楽しかったですね。

そして何より現実に存在する既存の要素を用いた退治方法だからこそ"ロジカル"さを感じれたなと。

そしてその"ロジカル"さが最後に一点に収束していく「ピースが嵌る」あの感覚は本当に脳汁がドバドバ出ますね。断片的な情報が形を成していく展開や、初めの事件が実は一番肝心だったって展開も大好きなので......

この物語の終わりも、この胡乱かつ目紛しい時間を通して、大きな一歩を互いに踏み締めた。そう感じざるを得ない爽やかな終わり方でとても良かったです。凄く良い読了感を持てました。

 

本来ならここで惜しみながらこの作品の続きを読みたい!などと書いてる所ですが、この感想を書き終える前に著者の伏見先生が2巻も鋭意執筆中とツイートしていたので、まだもう少しこの作品の世界、そして撫子とアマナの物語に浸れるのか....と思うと感無量です。

本当に面白い作品だったので、この先のご活躍とこの「獄門撫子此処ニ在リ」2巻、楽しみに待っています....!!