六畳間の窓枠

色々な作品の感想や所感を書いていけたらなと

ドスケベ催眠術って人助けも出来るらしい──ドスケベ催眠術師の子 感想

ドスケベ、そう名付けられる作品は現代において広く普及している。いや、寧ろし過ぎているのではないか?そう感じる瞬間がある。

いわば現代の世はドスケベ飽和状態と形容しても過言ではない筈だが、そんな中で新たなる「ドスケベ」の印象を引っ提げ、小学館ライトノベル大賞の門戸を叩いた─いや叩き壊した─スタンダードにしてオリジンである「ドスケベ催眠術師の子」は審査員講評でもあった通り飛び道具的な作品だったなと感じるのであった。

 

そういう訳で「ドスケベ催眠術師の子」感想です

タイトルからして優秀賞受賞云々を抜きにしても興味をすっげぇ惹かれる作品でしたが、まさか「ドスケベ催眠術師」というある種エロネタの王道(と勝手に思ってる)をこうも逆手に取った作りになってるとは...という衝撃がありましたね。

主人公であるサジは親にドスケベ催眠術師の父を持つが故に大変な人生を歩み、平穏を得ることになる訳ですが、そんな中現れた「二代目ドスケベ催眠術師」...つまりは父の後継を名乗る真友と出会う事で己の運命と向き合っていく事に...という感じですが、その各部分である「ドスケベ催眠術」を「エロでは無く、人助けの為に使える技術」という形で示してきたのはかなり新しいなと思いましたね。

そりゃ、催眠術=エロ。なんて安直な事は無い訳ですが、このドスケベ飽和状態の社会で見るのはやはりエロ側の使い方な訳で。その印象をこういう形で扱ってくるか!!と思わず笑みを浮かべてしまいました。

そして事前知識として「感動できる!」という話を伺っていましたが、まさか本当に感動出来るとは思わなかった....父の告白ビデオで泣いてしまいましたね....僕の負けです....

後ドスケベ催眠術師魔女狩りは緊迫感があり、ドキドキしました。

 

合理主義かつドスケベ催眠術師の父を持つサジも、最初...というかほぼ最終盤までキレを感じるツッコミをこなしつつ、どこか打算的な行動を行なっていたのはちょいと心象良くないぞ??となった矢先に告白のビデオを通して吹っ切れる、或いは素直になったのは爽やかですし、真友もドスケベ催眠術を扱うだけで名前通りマトモ...いや、言動からしてマトモではない不思議ちゃんなのだが.....なのかと思いきや催眠術のお陰でその他の人間は「肉人形」としか思えず、過去の経歴も本当に悲惨。という「人は見た目で判断出来ない」を多分に抱えたキャラでこれまた驚き。

しかもこの真友とサジという二人のキャラによって「ドスケベ催眠術は人助けに使える」というメインテーマがより強く補強されていたなと。いや、されてないと困るんですけども!!!

何より、真友が高麗川さんに対して「いつか絶対"友達になろ"と言う」宣言をしたのも、このテーマの補完と「過去との和解」や「素直な気持ちを...言おう!」、と言った部分の解消も行なっていたな〜と感じましたね。

 

ソロモンさん......?手に負えないd(

と言うよりはこの方めちゃくちゃしぶとく面の皮厚く生きてるので正直めちゃくちゃ見習いたいですね!!インキャには真昼間まひるの精神力が必要なのかもしれない。

 

本当に一回限りの飛び道具的な側面があるこの物語ですが、それでも根底に込められたメッセージは凄く前向きなモノですし、サジや真友たちの関係がこの後どうなっていくのかもやっぱ気になるので続きが読みたかったりしますね(でも一巻だからこそ完成されてるとも思うので、難しい気持ちだ)。

著者の桂嶋エイダ先生の次回作、楽しみにしています!!