六畳間の窓枠

色々な作品の感想や所感を書いていけたらなと

公務員 中田忍の悪徳7巻 感想

仲田忍を取り巻く現状の変化、もしくは爆弾的な展開が次巻には存在しているんじゃないか。

6巻のラストと立川先生の「8巻完結」の話の時点で考えていましたが、いざ蓋を開けてみれば仲田忍を取り巻く環境や感情への決着。その号砲と言える内容がこの一巻に凝縮されており本当に凄まじかったです。

濃密に、全てを暴く勢いで描かれるヒロイン達の感情と、その中で今まで以上に揺らぐ仲田忍。

ぶっちゃけ内容が内容なのでかなり読むのに時間を要しましたが、それでも最後まで読んで良かったと、そう思える内容でした。

 

そんな訳で、「公務員、仲田忍の悪徳 7」の感想です。

今回は主にアリエル、由奈、環に主なスポットが当たってる回でしたが、前々からちょいちょい忍への感情を示唆していた環はとにかく.....どころじゃない。「そ、そこまで行くのか.....!?」と読んでいてたまげたレベルの行動を取りましたが、由奈の過去、そして現在に至るまでの過程やその過程の中で埋没させていた好意の気持ちまでキッチリ描き切った事が凄く驚いた部分でした。

今までの忍を揶揄う様な言動も、失恋─無自覚に、でも自覚的だった感情─のショックの感情が反転してしまったものだと判明した今となってはかなり辛いモノがある.....

忍があの時別の言い方をしていたなら由奈の態度も、そして「仲田忍の悪徳」の話もまた別の形になっていたんじゃないか。など色々なIFは想像出来ますが、それは過ぎてしまった過去だし、あの言い方をしてしまった結果生じた紆余曲折な関係性が続いたからこその今があったのかなとも。

それが良いか悪いかは由奈によりけりだとは思いますが、読み手側に居る自分としてはしっかりと向き合った上であの結論に至れたのは良かったんじゃ無いかなと。そう信じてやみません。.......ただ、この物語が終わる時の重要な部分で由奈は関わってきそうだなって気もします。

反対に、環はそうした失敗で一度は折れるも、それを糧に新しい忍との関係性を築いたのはある種の若さから成せるものでもあるし年齢は違えど忍と曲がりなりにも正面から向き合っていたからなのかなと。

新しく出来た同学年のご学友の方も大切に、そして良い関係性を築けたら良いですね.....こうやって世界が広がっていく事ってとても良い事だと思うので。

 

そしてアリエルも刻一刻と終わりの時が近づいていますが、環の指摘で改めてハッとさせられましたね。言われてみればそうか!と唸らされました。

ナシエルの正体は恐らく忍の記憶の中の人物だと仮定して、かなり意識的に描かれていた「瞬きをする」描写と同関わりがあるのか見えてこない.....意識のリセット?うーん....

今回の巻で大体の関係に決着が付きましたが、まだ実像での未登場のナシエルとか由奈絡みの話(こっちもまだ終わってなさそうだし)、そして謎の全てが最終巻で一気に回収出来るんですか!?本当に!?

とにかく、発売も間近な中田忍の悪徳8巻が楽しみですし、7巻も本当に面白くそしてのしかかる様な重さを感じれた内容でした。

 

 

 

 

公務員 中田忍の悪徳7巻 感想

仲田忍を取り巻く現状の変化、もしくは爆弾的な展開が次巻には存在しているんじゃないか。

6巻のラストと立川先生の「8巻完結」の話の時点で考えていましたが、いざ蓋を開けてみれば仲田忍を取り巻く環境や感情への決着。その号砲と言える内容がこの一巻に凝縮されており本当に凄まじかったです。

濃密に、全てを暴く勢いで描かれるヒロイン達の感情と、その中で今まで以上に揺らぐ仲田忍。

ぶっちゃけ内容が内容なのでかなり読むのに時間を要しましたが、それでも最後まで読んで良かったと、そう思える内容でした。

 

そんな訳で、「公務員、仲田忍の悪徳 7」の感想です。

今回は主にアリエル、由奈、環に主なスポットが当たってる回でしたが、前々からちょいちょい忍への感情を示唆していた環はとにかく.....どころじゃない。「そ、そこまで行くのか.....!?」と読んでいてたまげたレベルの行動を取りましたが、由奈の過去、そして現在に至るまでの過程やその過程の中で埋没させていた好意の気持ちまでキッチリ描き切った事が凄く驚いた部分でした。

今までの忍を揶揄う様な言動も、失恋─無自覚に、でも自覚的だった感情─のショックの感情が反転してしまったものだと判明した今となってはかなり辛いモノがある.....

忍があの時別の言い方をしていたなら由奈の態度も、そして「仲田忍の悪徳」の話もまた別の形になっていたんじゃないか。など色々なIFは想像出来ますが、それは過ぎてしまった過去だし、あの言い方をしてしまった結果生じた紆余曲折な関係性が続いたからこその今があったのかなとも。

それが良いか悪いかは由奈によりけりだとは思いますが、読み手側に居る自分としてはしっかりと向き合った上であの結論に至れたのは良かったんじゃ無いかなと。そう信じてやみません。.......ただ、この物語が終わる時の重要な部分で由奈は関わってきそうだなって気もします。

反対に、環はそうした失敗で一度は折れるも、それを糧に新しい忍との関係性を築いたのはある種の若さから成せるものでもあるし年齢は違えど忍と曲がりなりにも正面から向き合っていたからなのかなと。

新しく出来た同学年のご学友の方も大切に、そして良い関係性を築けたら良いですね.....こうやって世界が広がっていく事ってとても良い事だと思うので。

 

そしてアリエルも刻一刻と終わりの時が近づいていますが、環の指摘で改めてハッとさせられましたね。言われてみればそうか!と唸らされました。

ナシエルの正体は恐らく忍の記憶の中の人物だと仮定して、かなり意識的に描かれていた「瞬きをする」描写と同関わりがあるのか見えてこない.....意識のリセット?うーん....

今回の巻で大体の関係に決着が付きましたが、まだ実像での未登場のナシエルとか由奈絡みの話(こっちもまだ終わってなさそうだし)、そして謎の全てが最終巻で一気に回収出来るんですか!?本当に!?

とにかく、発売も間近な中田忍の悪徳8巻が楽しみですし、7巻も本当に面白くそしてのしかかる様な重さを感じれた内容でした。

 

 

 

 

総括,2023年

もう年の瀬。というか大晦日と言う事で2023年を総括。

積もる話と言うほどの積み重ねがあった訳でも無い気がしますが、それでも流石に締めくらいはしておきたいので急いで筆を取った次第。

コミケ終わりかつ時間もそこそこカツカツの状態で書いてるので、記事としての体裁は完全に終わってると思いますがそれでも付き合ってくれれば幸いです。

 

冬コミ、最高の瞬間。(火鳥先生ありがとうございます)

 

2023年自体は自身が就職した事で一人暮らしが始まった事が一番大きな変化だったなと。

バイトでも痛感しましたが、やはり働くことってめちゃくちゃ大変ですね。

そんな思いをして捻り出される給料もまぁしょっぱいですし。やっぱり初期でどの会社を選ぶのか。そもそもどういう進路にするのかを決めておくのは大事だと痛感。

しかしそんな給料でも今まで以上にやれる事の幅は広がったので、給料自体の大切さは身に染みましたね。バカに出来ない。

同時に、今年はアイマスやシャインポスト、ワルキューレサンドリオンといったアイドル系のライブに行く機会が本当に多かった。

特にアイマスは念願叶って!と言う感じなので凄く楽しかった。これから開催のact4のチケットも握りたいですが、倍率がめちゃくちゃ高いとの事で厳しそう。

シャインポストは小規模ながら印象に残るライブをやってくれましたし、未だに自分がワルキューレの居ない世界で生きてるのが正直信じられない。活動休止(半ば解散)と言う事実に未だ心が追いついてない部分があるなって。

そして直近にオタクに連れて行かれたサンドリオンも非常に良かった。確かに狂う‼️とか言ってる奴が居るのも納得です。

他にも、積んでる書籍の幾つかを片付けたり、また増やしたり、ようやく「魔法使いの夜」をプレイ出来た(完全にプレイし終わったら記事に書きたい)事は大きな...と言うよりは、積んでる物が多くある自分にとって進展だった部分だなと。

映画は.....地理的に中々厳しい事もあり必然的に観る作品は縛られてたなと。来年はもう少し多く見たさもある。

 

そして崩壊3rdやブルアカ、アークナイツ等の大陸ゲームに多く課金した年でもありました!!!!!

ソシャゲに懐を破壊される!!!!!!!!!!!!!!!!!!助けて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

課金の結晶達
言うて育ってないのがバレバレだと思いますが許して....

他の人と比べたらマジで微々たる額だと思いますが、だとしても個人的には無視出来ない額を突っ込んでは爆死して顔終わってたので来年はもう少し少額に抑えたいですね。

でもするんだろうな

 

 

なんて、自分にとって楽しい事を優先し過ぎた結果としてイラスト関連の進捗は本当にからっきしの一年だった。

本当に終わってます。

日々気力を振り絞って積んでる作品や物語を読む。ただそれに終始し過ぎてイラストを描く時間が殆ど取れていなかったのは反省点。

冬コミに落ちた辺りからやる気が下火になってたのも拍車を掛けてるとはいえ、にしたって全然描いてない....寄稿用の作品も結局予定通りに出せなかった.....ので来年の目標として「イラストを描く/自分がしたい創作を実現させる為の時間を作る」と言うのは大きく掲げたいなと。

勿論、作品の消化や映画鑑賞とかの娯楽に耽るだろうけど、その労力を少しでも多くイラストに割く努力と実行はちゃんとしたいですね。

考えている創作や、二次創作。特に参加している合同創作で何かしら出して行けたらと思っています。

 

今年も多くの娯楽を消費し、それ以上のやり残しを多くして行きましたが、来年はこういった後悔をなるべく少なくして行きたいですね。本当に心の底から思います。

そして叶うなら転職したい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ホンマにしたい。言ってるだけじゃなくて行動に移せってのはマジでそうなので、こっちもちゃんと行動に移せたらなと。

こう不定形で書いてる時点でダメかもしれないけど。

 

そんな事を書いてる間に届いた今年最後のラスボス

 

新年初めはまほよとか、今年読んだにに感想書けてなかった中田忍やささみさん辺りの感想記事を書きたいですね。目標というより義務として書いておきます。

シロナガス島への帰還やアンリアルライフ辺りも優先的に終わらせたい気持ち。

 

では、また来年。良いお年を〜

ドスケベ催眠術って人助けも出来るらしい──ドスケベ催眠術師の子 感想

ドスケベ、そう名付けられる作品は現代において広く普及している。いや、寧ろし過ぎているのではないか?そう感じる瞬間がある。

いわば現代の世はドスケベ飽和状態と形容しても過言ではない筈だが、そんな中で新たなる「ドスケベ」の印象を引っ提げ、小学館ライトノベル大賞の門戸を叩いた─いや叩き壊した─スタンダードにしてオリジンである「ドスケベ催眠術師の子」は審査員講評でもあった通り飛び道具的な作品だったなと感じるのであった。

 

そういう訳で「ドスケベ催眠術師の子」感想です

タイトルからして優秀賞受賞云々を抜きにしても興味をすっげぇ惹かれる作品でしたが、まさか「ドスケベ催眠術師」というある種エロネタの王道(と勝手に思ってる)をこうも逆手に取った作りになってるとは...という衝撃がありましたね。

主人公であるサジは親にドスケベ催眠術師の父を持つが故に大変な人生を歩み、平穏を得ることになる訳ですが、そんな中現れた「二代目ドスケベ催眠術師」...つまりは父の後継を名乗る真友と出会う事で己の運命と向き合っていく事に...という感じですが、その各部分である「ドスケベ催眠術」を「エロでは無く、人助けの為に使える技術」という形で示してきたのはかなり新しいなと思いましたね。

そりゃ、催眠術=エロ。なんて安直な事は無い訳ですが、このドスケベ飽和状態の社会で見るのはやはりエロ側の使い方な訳で。その印象をこういう形で扱ってくるか!!と思わず笑みを浮かべてしまいました。

そして事前知識として「感動できる!」という話を伺っていましたが、まさか本当に感動出来るとは思わなかった....父の告白ビデオで泣いてしまいましたね....僕の負けです....

後ドスケベ催眠術師魔女狩りは緊迫感があり、ドキドキしました。

 

合理主義かつドスケベ催眠術師の父を持つサジも、最初...というかほぼ最終盤までキレを感じるツッコミをこなしつつ、どこか打算的な行動を行なっていたのはちょいと心象良くないぞ??となった矢先に告白のビデオを通して吹っ切れる、或いは素直になったのは爽やかですし、真友もドスケベ催眠術を扱うだけで名前通りマトモ...いや、言動からしてマトモではない不思議ちゃんなのだが.....なのかと思いきや催眠術のお陰でその他の人間は「肉人形」としか思えず、過去の経歴も本当に悲惨。という「人は見た目で判断出来ない」を多分に抱えたキャラでこれまた驚き。

しかもこの真友とサジという二人のキャラによって「ドスケベ催眠術は人助けに使える」というメインテーマがより強く補強されていたなと。いや、されてないと困るんですけども!!!

何より、真友が高麗川さんに対して「いつか絶対"友達になろ"と言う」宣言をしたのも、このテーマの補完と「過去との和解」や「素直な気持ちを...言おう!」、と言った部分の解消も行なっていたな〜と感じましたね。

 

ソロモンさん......?手に負えないd(

と言うよりはこの方めちゃくちゃしぶとく面の皮厚く生きてるので正直めちゃくちゃ見習いたいですね!!インキャには真昼間まひるの精神力が必要なのかもしれない。

 

本当に一回限りの飛び道具的な側面があるこの物語ですが、それでも根底に込められたメッセージは凄く前向きなモノですし、サジや真友たちの関係がこの後どうなっていくのかもやっぱ気になるので続きが読みたかったりしますね(でも一巻だからこそ完成されてるとも思うので、難しい気持ちだ)。

著者の桂嶋エイダ先生の次回作、楽しみにしています!!

 

 

胡乱な物語は身に染みる。という話──獄門撫子此処ニ在リ 感想

伝奇...怪奇で幻想的な物語という枠で括られる作品、或いはその枠に位置するであろう作品には、やはり心を奪われる。

現実と接しながらも届く事は無い絶妙な距離に位置する作品は、科学やネットが進歩し、限りなく超常現象が解体されつつある現代だからこそ"妙薬"とさえ感じる程の輝きと魅力を持っているのだろうなと、この「獄門撫子此処ニ在リ」という作品を読んで、改めて実感するのだった。

 

今回は「獄門撫子此処ニ在リ」の感想となります。

第17回小学館ライトノベル大賞の大賞作品─応募総数1469作って凄くない?─の大賞受賞作品というのにも目を惹かれますが、それ以上に興味を惹かれたのは今回ゲスト審査員を務めていたTYPE-MOON代表「武内崇」氏の影響が大きかったなと。

というのも、自分がTYPE-MOON作品(特に空の境界)を愛好しているからな訳ですが....、それは兎に角、この作品に興味を持つには十分かつ大きな要素だったと思います。──しかし読んでみれば、そういう要素が無くても発売したら必ず買っていたと確信があります。

なぜなら、こういうタイプの作品はド直球で好きなタイプなので!

 

無耶師と呼ばれる霊能力者、そしてその中でも随一で凶悪な「獄門家」の娘である「獄門撫子」と全てが胡乱で出来ている様な妖しさを持つ大学生「無花果アマナ」のコンビは、今年読んだ作品の中でも随一で好きでした。

鬼の一族。その中でも鬼の血が濃く、言って仕舞えばほぼ人外と言って差し支えなかった撫子が、「無花果アマナ」という人物を通してどんどん人間らしくそして歳相応な面を見せるようになっていき、反対に恐れを知らず、爛漫に行動するアマナは「獄門撫子」という少女を通して己の恐れと向き合う事になっていく展開はとても丁寧かつキャラのも魅力を引き出せていて凄く良かったです。

こういう相容れない、もしくは真逆の立ち位置にいた二人が心を開いていく話はやはり魅力があるし好きなんですよね.....王道には勝てねぇぜ.....

そこに並行して作品世界の用語の開示や登場人物達が増えていく(みんな魅力的!)ので集中して読み続ける事が出来ました。

主役コンビ以外なら冠さんや四月一日白羽と真神雪路も好きですが、強いて言えば獄門桐比等ですね。

冷たさを感じる言動を撫子に何度も浴びせますが、時折見せる優しさ?の様な言葉や、グジを料理する下りのお茶目さが凄く印象に残ってます。左側に居る兄弟?達もなんか可愛さがあって好きですね。本体的には恐ろしいモノなのでしょうけど。

 

後、獄門華珠沙も好きですね。あの凶悪さと軽さを持った言動が特に。

 

物語で現れる怪異や現象は恐らく現実にある要素で構成されてると思いますが、浅学なのもあり「ここ分かるぞ!」「ここは...どうだろ!分からね〜!」ってウンウン思いながら退治の内容を噛み砕いていた時間は楽しかったですね。

そして何より現実に存在する既存の要素を用いた退治方法だからこそ"ロジカル"さを感じれたなと。

そしてその"ロジカル"さが最後に一点に収束していく「ピースが嵌る」あの感覚は本当に脳汁がドバドバ出ますね。断片的な情報が形を成していく展開や、初めの事件が実は一番肝心だったって展開も大好きなので......

この物語の終わりも、この胡乱かつ目紛しい時間を通して、大きな一歩を互いに踏み締めた。そう感じざるを得ない爽やかな終わり方でとても良かったです。凄く良い読了感を持てました。

 

本来ならここで惜しみながらこの作品の続きを読みたい!などと書いてる所ですが、この感想を書き終える前に著者の伏見先生が2巻も鋭意執筆中とツイートしていたので、まだもう少しこの作品の世界、そして撫子とアマナの物語に浸れるのか....と思うと感無量です。

本当に面白い作品だったので、この先のご活躍とこの「獄門撫子此処ニ在リ」2巻、楽しみに待っています....!!

 

 

この混沌"メイヘム"に光あれ──楽園殺し4 夜と星の林檎 感想

ここまで追って来れて良かった!!と思う作品と出会える時が一番興奮するタイミングだと思う事がままある訳だが、この「リベンジャーズ・ハイ」もとい「楽園殺し」と銘打たれた作品は前回発売された1,2でその中の一つになり、今回の3,4巻で自分の中で最高の作品の一つになってしまった!と、そう確信を抱かずにはいられなかった──

 

そんな訳で[楽園し4 夜と星の林檎]、無事に読了しました。

前回はシーリオの過去や2巻のVS人形遣いで意味深な描写がされていたチューm....知海の砂塵能力の開示(とても格好良かった!)、加えて砂塵教と呼ばれる今までとは比べ物にならない程強力な砂塵能力を持つ新たな敵も登場しましたが、何より歌姫ノエルが攫われ、知海も敵の手に堕ちるといった一体全体「どうするねんこの状況」みたいな状況で終わったのもあり、今回は終始ハラハラしてましたね。

同時に驚くのはページ数。なんと519ページ!!

........519ページ!?!?!??

まさか楽園殺しでこんなにも分厚く、より読み応えが高いページ数が出されるのは歓喜の極みだし、読了した今だからこそ改めて水田先生の「削るところは.......ない!!」という言葉の意味を噛み締められますね。

そして今回も美麗かつ「最早どういう描き方をしてるか分からない。」と自分の中で定評のあるイラストレーターのろるあ先生が担当していますが、やはりこの美しさと妖しさが同居するこの作風はもう訳が分かりませんね!どうなってるんでしょう!!

 

 

今回初めにしたいのはシーリオとノエルの関係。幼少の頃から立場は違えど半ば幼馴染として共に育ち、成長し、そして突然別れを告げる事になった二人。ただその想いは時間を経るごとに萎んでいく...訳ない!!寧ろより大きく成熟していってる!!

「歌手になりたい」という夢を抱いたノエルの初期衝動は何の返事も送り返してこないシーリオへの気持ちが核にあったし、同時にシーリオは"夜"になったからこそ、以前よりも増してノエルは「自分の全てを賭して護るべき存在」という気持ちが膨らんでいたなと。

何よりシーリオはジャズハイや楽園殺し1,2巻を読んだ限りでは「冷静沈着」という言葉が似合う様な人物...という印象がありましたが、今回は知海に振り回されて辟易してる様やノエルが攫われた事に対しての動揺する姿、部下に対してなりふり構わず協力を申し込む姿....とより血の通った姿が多く見れてとても良かった。

何よりノエルに関しては鈍感というか、「こ、これで気づかんのかお前は!?!??」みたいな姿を晒してくれて大変良かったです!....てか部分的に将来どうなるかが示唆されてるんだがらはよ幸せになれ。なってくれ。なるべきだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

個人的にこのシーリオ関係で好きな描写は盟主シュテルンに館へ招待され、もてなされてるラストの部分ですね。あそこは微笑ましくも、同時にもう表向きで関わる事は無いんだろうな....という寂しさを湛えているので......

ノエルも淑やかなお嬢様...というよりは芯の部分がめちゃくちゃ強い溌剌とした娘なのが本当に見てて気持ちが良いキャラでした。

 

知海とシルヴィの関係性は、ジャズハイと前回を通して相棒→運命共同体やで!みたいなレベルにまで行き着いたな....と感じてるんですけど、知海を攫われたにも関わらず取り乱さずにまずは落ち着く。を徹底してるシルヴィには成長を感じましたし、知海を慰めるシルヴィマジでヤバいです。凄まじい。ここまでのモノを投げつけられるとは.................

そして洗脳から戻す為の手段もジャズハイの再演をしつつ、明確に「あなたのお兄さんは、わたしがいただいてく」って宣言したのはマジ狂いですよ。強火過ぎる!!

 

ボッチは相変わらずの「俺は俺の道を行くぜ」と感じさせる言動と最大限仲間を信頼しているんだなと思わせる描写が沢山あって良かったですが、まさかここでかぼちゃの仮面に隠された素顔の一端を拝めるとは.....

 

そして今回の敵であるサリサ・リンドールとベルガナム・モートレット。この二人(というかサリサ)は最初険悪な関係だったってホント?ってなるくらいには絶妙に仲が良くて作中で屈指に好きなコンビですね。こういう若干チグハグさを感じさせるコンビが大好き!癖"ハオ"!

互いに異形の砂塵能力を有してますし、何よりベルガナムは本当に人間を辞めていた。ルーガルーの獣人化も「これ砂塵能力?」となるタイプではありましたが、それすらも逸脱した完全な異形には畏れ慄きましたよ.......だからこそ、あの純粋かつ狂気然とした精神と併せて「司教」という立ち位置に居るのが相応しい。と感じる威厳があったのだろうなと。

サリサも環境によって歪められてしまった存在という感じがしましたし、断片的な話から酷い目に遭ってきたのは事実っぽいので何らかの報いはあって欲しい...とは思いますが、昂りながら殺しを行っているのもまた事実なのでキッチリとした裁きとその上で何かしらの報いがあって欲しい。という思いが凄くあります。

しかしこのサリサの存在によって明かされた断片的な情報からしてロロや今回明らかになった「偉大都市」を設立した<Dの一団>の末裔達である盟主は何か裏でとんでもない事に関わってない?

ロロが二種の砂塵能力?と「次元斬り」と呼ばれる力を有している事や15年前の取り決め含めてなんかキナ臭くなってきましたね............

 

この3,4巻で初めて存在が明らかになった「林檎」や<Dの一族>辺りの設定は世界観の拡張性と既存要素の補完の役目を担っていたと思いますが、まさかここで「リベンジャーズ・ハイ」が本当に重要になってくるとは思わないじゃ無いですか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ここ本当にビックリしました。前回の3巻で「ベルガナムを強化したのはスマイリー」って話が出たので、「あー呂暇先生が言ってた繋がり的な側面はここかな?」と思ってた矢先に「スマイリーの林檎」「林檎、もしくはその在り処を知っていた」「エミール・ラフ」「近く争奪戦になる」etc.....ってオイオイオイオイ待ってくださいよ!

呂暇先生がスマイリーをかなり気に入っていたのは結構周知だと思いますけど、まさかこの一連の事件の核部分に居座る存在にまでなっていたとは思わんて!!!!!

更に「札持ち」と呼ばれる存在や寡婦....「マダム・ドルトラ」や白衣を着た男、そして前回何者か(今回この人物が寡婦と判明しましたね)に協力を申し込まれたテスラ・バレーが登場したりと新たな謎や既知の存在がより重要になってくるこの展開は本当に堪らない!血が沸騰してましたよ..........

ラストの七つの林檎と蒸留酒が安置された机も、話の終わりとしては不気味さを湛えてますし、本当にこの先の「偉大都市」やキャラ達の命運はどうなっていくのかより気になる終わりだったなと。

 

あとがきにて「今後の展望は著者にも分かりません」と書いてありましたが、やはり一読者としてはこの捩れながらも集約しつつある因果や因縁がどう決着していくのかを知りたい気持ちで一杯ですが、とはいえやはり”一読者”という立場を逸せないので気長にこの続きやSSなどが世に出るのを待っていたいなと思います。

改めて、本当に読み応えと興奮がある最高の作品をありがとうございました!

願わくば続刊が出ることを!

 

 

思っていた以上にシャフトが好きだったかも。という話──シャフト批評誌「もにも〜ど」感想

自分が特殊な演出をするアニメを好きになる、注目してしまう要因にはやはりシャフトの影響が強いと感じる。

他では見られないあの特殊な演出や場面カット、他のアニメ制作会社とは違った妖しくも美しい世界観や色彩は小学生の頃に出遭ってしまったら、それはもう好みがひん曲がるのは半ば必然的だろう。

オタクと呼べるほど熱中していなかったアニメにのめり込むキッカケになった作品はまどマギだったし、カゲプロのアニメであるメカクシティアクターズ物語シリーズを見るキッカケになった傷物語Fateで二番目に見た作品であるFate/EXTRA Last Encoreの制作もシャフトだったり。思い返せば何かとシャフト作品に縁がある─それもターニングポイント的な場面で─学生時代を過ごしてきた事もあり、そんなシャフトを愛好とする方々が集まり作り上げられた濃密な批評誌を見逃せないのもそれは至極当然だったと、読み終わった今でも強く思う訳であった。

 

Twitter経由で知り、5月の文芸フリマにて購入した総勢25名・総ページ数332Pの大ボリュームシャフト批評誌「もにも〜ど」を先日読み終えましたが、本当にどの内容も濃く、細かく分析されていて非常に読み応えがありました。

しかし、購入から5ヶ月間も掛かったのは流石に怠惰なのでは?と思わなくもないですが、その分長く楽しめた。と言う事で......

 

前半部分を彩った北出栞氏の「スマートフォンゲームによる「アニメ」の拡張─『マギアレコード』が達成したもの」を筆頭としたマギレコに関する批評は、「マギレコはどういった意味/アプローチを内包する作品だったのか」に話の肝が置かれていた事もあり、マギレコを見ていなかった自分はかなり興味を唆られる内容で楽しかったです。

基本的に印象深く「ここまで見ているのか....」と感心する批評が多くありましたが、その中でも特に印象深い批評を(強いて)挙げるなら

巴マミのテーブルはなぜ三角形なのか(anakama氏)

・シャフト演出が音楽と交わるとき──物語る前衛音楽と魔法の音の成り立ちについて(rion氏)

・自ら終わりを描くこと──『Fate/EXTRA Last Encore』における「再演」と「シャフトらしさ」の逆説(初雪緑茶氏)

〈物語〉シリーズにおける文学の進化史─尾石達也から板村智幸へ(Morytha氏)

の四編でしょうか。

 

巴マミのテーブルはなぜ三角形なのか」はあくまでも「前衛的なシャフト演出の一環」、試聴時はごく当たり前の風景として流していた「やたら尖ったテーブル」に対して、こういう解釈や意図を汲み取る事が出来ると言う所に改めてシャフトという会社が作るアニメの「細かさ」について改めて感心する事に。

 

「シャフト演出が音楽と交わるとき」は〈物語〉シリーズまどマギで使用されている音楽の源流を辿りながら、その音楽たちがどうアレンジされ作品に落とし込まれているのかを事細かに解剖し、分析し、描き切っていた内容に圧倒されたのを覚えています。

とは言え、悲しい事に記憶力が終わり過ぎていた為、劇中で使われていた曲をパッと思い出せない事もあったのでこの批評で挙げられた作品見返す際は副読本の様な形で読み返していきたいなと。

 

〈物語〉シリーズにおける文学の進化史」も「伝奇」を想起させる様な文字の使い方をしていた「化物語」と以降の物語シリーズのポップさを持つ文字演出はどう違い、どういう効果をそれぞれ持っていたのかに視点が当たっていたのが印象的でした。

同じ様な演出に見えるが、演出する人物が違えば当然その内包する意味合いも異なる。

当たり前の話ですがそこまで意識していなかったので本当に興味深かったですし、「文字演出に関しては〈物語〉シリーズはどこか失速するように幕を閉じる」と締め括ったのも凄く「批評」としての在り方が前面に出ていた印象深い終わり方でした。

 

「自ら終わりを描くこと──『Fate/EXTRA Last Encore』における「再演」と「シャフトらしさ」の逆説」、このもにも〜どを手に取るキッカケとなった批評、かつ型月を愛好としていた人達ですらあまり語らない─語っていてもそれは愚痴と言った良い話ではない─「Fate/EXTRA Last Encore」がどういう作品だったのか。そしてどういう目線で観るのかを語り尽くしており非常に楽しく読ませて頂きました。

特にこの批評において「シャフトらしさ」と言える演出─特に視聴者サイドや奈須きのこが期待していたであろう"前衛さ"─がある種空回りしていた原因についての言及が他の批評の「らしさ」に纏わる話と対になる...と感じる内容だった事や、ラスアンという作品を解剖してけば、そこに込められていた骨子はとても純粋かつ王道のモノだった。というのはラスアンという作品の新たな解釈の地平を切り拓いたと思います。

 

シャフトというアニメ制作会社は唯一無二とも言える世界観と演出、そしてそれに魅せられたファンの皆々様の根強い人気がある。この批評誌を読み終えた上でより強く思っていますが、ここまでシャフトという作品に対して熱烈かつ見落としてしまいそうな部分にまで着目した批評誌は見た事が無かった(過去にはあった様ですが、もう読める手段も無く.....)のでとても興味深く、そして自分には無かった視点を多く得れたと思いました。

そうやって読み進めていく中で、自分にとってシャフトがどれ程(無意識的に)影響を与えていたのかを改めて感じましたし、その影響が巡り巡って色々な世界を開拓する要因になっていたのであれば感謝しきれない気持ちで一杯になりますね。

次回の批評誌の制作も始まっている様なので、完成を楽しみにしています。