六畳間の窓枠

色々な作品の感想や所感を書いていけたらなと

この混沌"メイヘム"に光あれ──楽園殺し4 夜と星の林檎 感想

ここまで追って来れて良かった!!と思う作品と出会える時が一番興奮するタイミングだと思う事がままある訳だが、この「リベンジャーズ・ハイ」もとい「楽園殺し」と銘打たれた作品は前回発売された1,2でその中の一つになり、今回の3,4巻で自分の中で最高の作品の一つになってしまった!と、そう確信を抱かずにはいられなかった──

 

そんな訳で[楽園し4 夜と星の林檎]、無事に読了しました。

前回はシーリオの過去や2巻のVS人形遣いで意味深な描写がされていたチューm....知海の砂塵能力の開示(とても格好良かった!)、加えて砂塵教と呼ばれる今までとは比べ物にならない程強力な砂塵能力を持つ新たな敵も登場しましたが、何より歌姫ノエルが攫われ、知海も敵の手に堕ちるといった一体全体「どうするねんこの状況」みたいな状況で終わったのもあり、今回は終始ハラハラしてましたね。

同時に驚くのはページ数。なんと519ページ!!

........519ページ!?!?!??

まさか楽園殺しでこんなにも分厚く、より読み応えが高いページ数が出されるのは歓喜の極みだし、読了した今だからこそ改めて水田先生の「削るところは.......ない!!」という言葉の意味を噛み締められますね。

そして今回も美麗かつ「最早どういう描き方をしてるか分からない。」と自分の中で定評のあるイラストレーターのろるあ先生が担当していますが、やはりこの美しさと妖しさが同居するこの作風はもう訳が分かりませんね!どうなってるんでしょう!!

 

 

今回初めにしたいのはシーリオとノエルの関係。幼少の頃から立場は違えど半ば幼馴染として共に育ち、成長し、そして突然別れを告げる事になった二人。ただその想いは時間を経るごとに萎んでいく...訳ない!!寧ろより大きく成熟していってる!!

「歌手になりたい」という夢を抱いたノエルの初期衝動は何の返事も送り返してこないシーリオへの気持ちが核にあったし、同時にシーリオは"夜"になったからこそ、以前よりも増してノエルは「自分の全てを賭して護るべき存在」という気持ちが膨らんでいたなと。

何よりシーリオはジャズハイや楽園殺し1,2巻を読んだ限りでは「冷静沈着」という言葉が似合う様な人物...という印象がありましたが、今回は知海に振り回されて辟易してる様やノエルが攫われた事に対しての動揺する姿、部下に対してなりふり構わず協力を申し込む姿....とより血の通った姿が多く見れてとても良かった。

何よりノエルに関しては鈍感というか、「こ、これで気づかんのかお前は!?!??」みたいな姿を晒してくれて大変良かったです!....てか部分的に将来どうなるかが示唆されてるんだがらはよ幸せになれ。なってくれ。なるべきだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

個人的にこのシーリオ関係で好きな描写は盟主シュテルンに館へ招待され、もてなされてるラストの部分ですね。あそこは微笑ましくも、同時にもう表向きで関わる事は無いんだろうな....という寂しさを湛えているので......

ノエルも淑やかなお嬢様...というよりは芯の部分がめちゃくちゃ強い溌剌とした娘なのが本当に見てて気持ちが良いキャラでした。

 

知海とシルヴィの関係性は、ジャズハイと前回を通して相棒→運命共同体やで!みたいなレベルにまで行き着いたな....と感じてるんですけど、知海を攫われたにも関わらず取り乱さずにまずは落ち着く。を徹底してるシルヴィには成長を感じましたし、知海を慰めるシルヴィマジでヤバいです。凄まじい。ここまでのモノを投げつけられるとは.................

そして洗脳から戻す為の手段もジャズハイの再演をしつつ、明確に「あなたのお兄さんは、わたしがいただいてく」って宣言したのはマジ狂いですよ。強火過ぎる!!

 

ボッチは相変わらずの「俺は俺の道を行くぜ」と感じさせる言動と最大限仲間を信頼しているんだなと思わせる描写が沢山あって良かったですが、まさかここでかぼちゃの仮面に隠された素顔の一端を拝めるとは.....

 

そして今回の敵であるサリサ・リンドールとベルガナム・モートレット。この二人(というかサリサ)は最初険悪な関係だったってホント?ってなるくらいには絶妙に仲が良くて作中で屈指に好きなコンビですね。こういう若干チグハグさを感じさせるコンビが大好き!癖"ハオ"!

互いに異形の砂塵能力を有してますし、何よりベルガナムは本当に人間を辞めていた。ルーガルーの獣人化も「これ砂塵能力?」となるタイプではありましたが、それすらも逸脱した完全な異形には畏れ慄きましたよ.......だからこそ、あの純粋かつ狂気然とした精神と併せて「司教」という立ち位置に居るのが相応しい。と感じる威厳があったのだろうなと。

サリサも環境によって歪められてしまった存在という感じがしましたし、断片的な話から酷い目に遭ってきたのは事実っぽいので何らかの報いはあって欲しい...とは思いますが、昂りながら殺しを行っているのもまた事実なのでキッチリとした裁きとその上で何かしらの報いがあって欲しい。という思いが凄くあります。

しかしこのサリサの存在によって明かされた断片的な情報からしてロロや今回明らかになった「偉大都市」を設立した<Dの一団>の末裔達である盟主は何か裏でとんでもない事に関わってない?

ロロが二種の砂塵能力?と「次元斬り」と呼ばれる力を有している事や15年前の取り決め含めてなんかキナ臭くなってきましたね............

 

この3,4巻で初めて存在が明らかになった「林檎」や<Dの一族>辺りの設定は世界観の拡張性と既存要素の補完の役目を担っていたと思いますが、まさかここで「リベンジャーズ・ハイ」が本当に重要になってくるとは思わないじゃ無いですか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ここ本当にビックリしました。前回の3巻で「ベルガナムを強化したのはスマイリー」って話が出たので、「あー呂暇先生が言ってた繋がり的な側面はここかな?」と思ってた矢先に「スマイリーの林檎」「林檎、もしくはその在り処を知っていた」「エミール・ラフ」「近く争奪戦になる」etc.....ってオイオイオイオイ待ってくださいよ!

呂暇先生がスマイリーをかなり気に入っていたのは結構周知だと思いますけど、まさかこの一連の事件の核部分に居座る存在にまでなっていたとは思わんて!!!!!

更に「札持ち」と呼ばれる存在や寡婦....「マダム・ドルトラ」や白衣を着た男、そして前回何者か(今回この人物が寡婦と判明しましたね)に協力を申し込まれたテスラ・バレーが登場したりと新たな謎や既知の存在がより重要になってくるこの展開は本当に堪らない!血が沸騰してましたよ..........

ラストの七つの林檎と蒸留酒が安置された机も、話の終わりとしては不気味さを湛えてますし、本当にこの先の「偉大都市」やキャラ達の命運はどうなっていくのかより気になる終わりだったなと。

 

あとがきにて「今後の展望は著者にも分かりません」と書いてありましたが、やはり一読者としてはこの捩れながらも集約しつつある因果や因縁がどう決着していくのかを知りたい気持ちで一杯ですが、とはいえやはり”一読者”という立場を逸せないので気長にこの続きやSSなどが世に出るのを待っていたいなと思います。

改めて、本当に読み応えと興奮がある最高の作品をありがとうございました!

願わくば続刊が出ることを!