六畳間の窓枠

色々な作品の感想や所感を書いていけたらなと

ロストマンの弾丸 感想

まさかシリーズ完結から1年後に2巻と3巻を読むことになるとは思わず、ここまで待たせてしまって申し訳ない....!!という気持ちで一杯一杯です(謝辞)。

とはいえ、いざ読み始めればそんなスパンは関係なく、この作品そして未那を始めとした魅力的な登場人物達の活躍に引き込まれ楽しく読み終えれました。

 

二巻は海外からやって来た磯良と彼女が起こす混沌に巻き込まれたギルが主な敵として現れましたが、この二人はヴィトーとビークヘッド(未那)と対になる様な立ち位置の存在だなって印象がありました。

間違えたとしても正しくあろうとしたヴィトーとは対照的に正しい道から間違えた道に転がり続けてしまった、転がされ続けてしまった磯良。

大切な家族を失うも、学院で過ごす事で暖かな生活や友人、そして得難い仲間を手に入れた未那とロストマンズ・キャンプでの劣悪な環境により利用され全てを奪われてしまったギル。

こういったある種の「もしも」を持つキャラ達を通して未那がより守る側の存在として成長していきましたし、磯良というどうしようもない悪と対峙した事で「敵すら救う」というある種甘っちょろい理想とより真剣に向き合う契機になっているなと。

とはいえ、その磯良は三巻でとんでもない目に遭っていて居た堪れない気持ちになりましたけども.....(前堂、邪悪すぎる!)

未那が東への恋心(この場面を読んでた時はまだlike寄りなのかLOVE寄りなのかちょっと迷ってた)を自覚したのも「等身大の少女らしくなってきてる...!!」って気持ちになりましたが、それ以上に桐乃とより心を通わせる間柄になった事がすげー嬉しくてちょっと泣いたり。

素の桐乃さんを見た未那が複雑な気持ちを持ってるの、内心フフ....ってなってしまう。威厳ある桐乃さんも良いけどこっちの残念な感じだって可愛いでしょうよ!!

 

3巻ではバルトハウトと神楽の子供であるフォーツーが敵として現れましたが、正直、この1冊で1巻から開示されていた話を全て回収し切るとは思いませんでした。

というか東が墓の前で語っていた内容をこういう形で回収してきたのは流石にビックリしたというか、そこもちゃんとやるんだ!?!?という驚きがありましたね.....

そして今回の敵として現れたフォーツーは年相応な無邪気で、素直でとても可愛い即年とそれ故に実直な気持ちと残虐性(植え付けられたモノではありますが)が同居しているアンバランスさが読んでいてハラハラしましたし、その上で東とああいう和解に着地させたのは凄まじい手腕....。

「流石に東とは和解出来んだろ....アコニーとしての特性もあるし...それに前堂がフォーツーは最終的に死ぬように仕向けてくるだろ...!!」って気持ちだったので、その全てをへし折るとは。前巻で示した「敵さえも救う」を有言実行した形だったなと。

 

東と紗希の和解はすげぇもう本当に良いんだけど、俺が言葉を尽くすよりはやっぱ読んだ方がこの良さをダイレクトに分かってくれるよなって...もう大好き過ぎる.....

 

しかしこの1巻で過去との決着以外にも東への気持ちも明確に自覚したり、長年の付き合いだった操に秘密を打ち明ける(シスターとの会話も結構グッと来ちゃって涙ぐんでました)事もこの一巻の内でやってのける...それも自然な形で物語に組み込むのは驚嘆ですね。

磯良もあんな目に遭いましたが、そこが希望の一手に繋がる構成だったのも妙手だと感じます。あの特異体質をああやって生かすとは.....

後やっぱ桐乃さんが可愛すぎるし、やっぱこの人には敵わねぇな....!!って気持ちにさせられるセリフが東との恋関係で多かった気がしますね。大人な魅力のある女性、精神的に強くて嬉しい!

そして愉快そうな東が多く見れて、更にバルトハウトとの付き合いがどんなだったのかも知れて笑顔になっちゃいます。今でこそ落ち着いた感じですけど、本当に心を開いた相手にはかなりフランクだなぁと。そういうの素敵ですよね。

 

とは言え、やはりと言いますか前堂までは届かなかったですね....

今回で完結とは言え前堂は黒幕として今まで後ろに隠れてた存在なので、その前堂を倒す!!まで行かなかったのは仕方無い部分もありますし、同時に全てが解決した訳じゃない。ロストマンズ・キャンプは依然として危ない秩序の上に成り立っている。悲劇も相変わらず蔓延ってるだろうし、前堂の匙加減一つで仲間が敵となる可能性も示されている。

それでも、ビークヘッドはそんなクソッタレな不条理を跳ね除け、変えてしまう。

もしかしたら前堂すら宣言通り救ってしまうかも知れない。

たった3巻。されど3巻の中で成長して強くなっていった未那が前堂に行ったあの宣戦布告とエピローグを読んだ時、物語はここで終わってしまうけど、続いてく向こう側の世界は良い方向に向かっていくだろうなという確信を持ちました。

それほどまでに未那がこの3巻で見せてくれた決意は強く、眩しく、涙ぐむ様な熱さを秘めた物だったなと感じます。

 

紗希との友情の行方や桐乃との恋のバトル、前堂との決着、アコニーの謎...etc.と、まだこの「ロストマンの弾丸」という世界に触れていたいし登場人物達の目眩く物語を読んでいたい!!という気持ちもありますが、あそこまで鮮やかに決着を付けられてしまうと、もう笑顔で見送る事しか出来ませんね。

ロストマンの弾丸」、大分周回遅れでありましたが最後まで読み終えれて良かったです。

水田先生の新作であるスクール=パラベラムも楽しみにしています!